ダーウィン法律事務所

当所弁護士の岡本が、

『クレプトマニアや性嗜好障害等の依存症とアルコールや薬物への依存症の違い』

についての刑事コラムを掲載いたしました。

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平素は格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます
 さて令和2年7月1日より、野俣智裕弁護士が弊事務所に共同代表として参画いたしました。
 経験豊富な弁護士の新規参画により、皆様により一層質の高い法的サービスをご提供させていただけるものと考えております。
 弊所は、今後も皆様のご期待にお応え出来るように、進化を続けて参ります。
 何卒倍旧のご支援ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

当所弁護士の岡本が、

『知らない間に罪を犯してしまった…法律を知らなかったと言い訳することは可能か』

についての刑事コラムを掲載いたしました。

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当所弁護士の岡本が、

『刑罰を科する目的とは何か。刑事司法に関心が集まっている今、もう一度考え直す。』

についての刑事コラムを掲載いたしました。

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当所弁護士の岡本が、

『職務質問は断ることができない?特殊詐欺の受け子に対する長時間の職務質問について。』

についての刑事コラムを掲載いたしました。

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当所弁護士の岡本が、

『覚醒剤摂取後の自動車運転で死傷事故。運転開始時に意識不明な状態だった場合はどうなる?』

についての刑事コラムを掲載いたしました。

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  弊所代表弁護士荒川は僧籍を有しており、宗教法人法務に関するご相談を対応しております。昨今、ご相談が増えておりますので、宗教法人法務に関するご案内を刷新いたしましたので、ご覧ください。


宗教法人法務

https://criminal.darwin-law.jp/en/

 

刑事事件専門サイトの英語サイトを公開いたしました。在留外国人への刑事事件の相談に今後幅広く対応いたします。


We have released an English site specialized in criminal cases!   We will support criminal case consultations for foreign clients.  Feel free to contact us.

 弊所が発行しているダーウィンタイムスVol.2を掲載致しました。

本号では、新型コロナウイスルに対する企業運営の概論と、令和2年4月1日より改正民法についての概論を掲載しております。

是非ご覧ください。

ダーウィンタイムスVol.2ダウンロード

新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言により企業運営は大幅に舵取りの修正を余儀なくされております。弊所にも多くのご相談をいただいておりますが、その中でも労務関係についてのご相談が多い印象を受けております。他の法律事務所からの協力も得つつ、Q&Aをまとめましたのでご参照ください。なお、本Q&Aは一般的な内容となっており、個別具体的な事案によっては解釈が異なる可能性があり、内容には責任を負いかねますので、実際に各問題についての対応を検討する際には、同封させていただきましたチェックリスト等を利用して弊所にご相談いただくか、専門家等の指導を受けていただくようお願い申し上げます。

 

 

目次

1 労務関係への影響
(1-1) 緊急事態宣言を受け、会社側から従業員に自宅待機を指示する場合、健康状態に問題のない従業員に対して賃金を支払う必要はありますか?

緊急事態宣言が解除される前に、従業員に自宅待機を命じる場合の賃金の支払義務については、以下のように場合分けをして検討する必要があります。

  • (1)事業継続を求められている業種の場合
  • 事業継続が求められている業種の場合には、あくまで企業が自主的に従業員を休業させることになりますから、労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、平均賃金の6割以上の額を休業手当として支払う必要があるものと解されています。

  • (2)休業要請を受けている業種の場合
  • 緊急事態宣言に基づき、都道府県知事から休業要請(特措法29条9項)を受けた業種については、法律に基づく休業要請であることから、基本的には労働基準法26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当せず、休業補償は不要と考えられます。
     もっとも、休業要請はあくまで「要請」であり強制力があるものではないことや、リモートワークによる業務が可能であるケースも考えられることから、休業補償を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別的に判断する必要があります。

  • (3) 上記(1)及び(2)に該当しない業種の場合
  • 多くの企業はこちらに該当するのではないかと思われます。基本的には(1)と同様に賃金の6割以上の休業補償が必要となるケースが多いものと考えられます。
     しかしながら、今回の緊急事態宣言は、感染につながる人間間の接触を極力減らし、新型コロナウイルスのまん延を防止しようとするもので、企業としても従業員を自宅待機させること等によって、人間間の接触を減らすように努めることが求められています。
     また、企業は従業員に対して安全配慮義務を負っていますから、職場に出社することによって新型コロナウイルスに感染する可能性があることを考慮すれば、安全配慮義務を全うする意味でも、従業員を休業させる必要がある場面は存在するものと思われます。
     したがって、(2)の場合と同様に、休業補償を要するか否かについては、当該企業の業種・事業内容、休業する従業員の地位・業務内容、休業する必要性等を踏まえて個別的に判断し、場合によっては休業補償が不要となるケースもあり得るものと考えられます。

(1-2) 新型コロナウイルスに感染した従業員に対して、自宅待機を命じる場合に、賃金を支払う必要がありますか?

新型コロナウイルスに感染した従業員に、適切な労務提供を期待することはできません。ですから、労務提供を受けられない以上、原則として賃金の支払いも不要です。
 また、職務と無関係に感染している場合には、従業員による労務提供が不可能となったことについて、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」も認められませんから、休業補償を支払う必要はないものと考えられます。
 他方で、感染拡大のために必要な措置を講じていなかった結果として、従業員が新型コロナウイルスに感染したと認められる場合、労務を提供できないことについて、「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)があるとして、全額の賃金支払義務が認められる可能性はあります。
 なお、会社側が賃金等を支払わない場合でも、健康保険から傷病手当金の受給を受けられる可能性があります。賃金の3分の2程度の補償が受けられると考えられますので、具体的な申請手続などは、加入する保険組合にお問い合わせください。

(1-3) 新型コロナウイルスが流行している地域に出張させていた従業員が帰国した際に、感染の有無を確認できるまでの間、自宅待機させた場合、賃金支払い義務は生じますか?

雇用契約に基づく業務命令権により、自宅待機を命ずることは可能です。
 一方で、従業員が、新型コロナウイルスが流行する地域に赴任していたのも、会社の業務命令に基づくものです。新型コロナウイルスへの感染についての確認が必要となったことについて、「債権者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)は認められそうです。
 したがって、全額の賃金支払義務、あるいは少なくとも「使用者の責に帰すべき事由」(労働基準法26条)があるものとして平均賃金の6割以上の支払義務が認められるものと解されます。

(1-4) 従業員の勤務時間について、8時間から7時間に変更することを検討しております。この場合、賃金を8分の7に減らすことは可能でしょうか?

労働基準法26条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には、休業期間中の手当てとして平均賃金の6割以上を支払なければならないとされており、1日の一部を休業する場合には、その日について全体として平均賃金の6割以上を支払うものと解されています。
 労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業と解される場合には、賃金の8分の7=87.5%を支払うことで足りることになります。

(1-5) 緊急事態宣言の影響で経営状況が悪化しています。 社員をリストラすることは可能でしょうか?
  • (1)整理解雇とは
  • 会社側の経営事情等によって一方的に社員を解雇することを「整理解雇」といいます。他の解雇と同様に、従業員の職を奪い、生活基盤を失わせることとなりますから、厳格な要件のもとでしか認められていません。従業員による解雇無効訴訟の提起によって多額の賠償金の支払義務を負うことを避けるためには、慎重な検討が必要です。

  • (2)整理解雇が有効となるための要件
  • 整理解雇が有効となるためには、判例上、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性という4つの要件があります。

    ①人員整理の必要性
    どの程度受注が減ったのか、人件費が占める割合はどの程度なのか、企業のキャッシュフローはどの程度悪化しているのか、今後どれほどの期間その状況が続くと見込まれるのか、などの事情を考慮して、人員を整理する必要性がどれほど高度に認められるのかが問題となります。
     新型コロナウイルスとの関係については、政府から雇用調整金を受給できる場合がありますので、それらを検討してもなお人員削減が必要であったかという視点も必要となります。訴訟となった場合にはこれらの事情を企業側が立証する必要がでてきますので、可能な限り、財務数値などを元にした客観的なデータを準備しておく必要があります。

    ②解雇回避努力
    整理解雇は「最後の手段」とも呼ばれる方法ですので、整理解雇を避ける努力を尽くしたかどうかが要件となります。希望退職者の募集、役員報酬の削減、従業員の配置転換などの事情が考慮されることが多いです。新型コロナウイルスの影響に関するものでいえば、テレワークの導入や勤務時間短縮などにより業務量の調整を図ることができなかったかなども考慮要素になりそうです。
     なお、解雇回避努力は、全ての類型の従業員を同様に扱うことまでは求めていません。正規社員を守るためにやむなく派遣社員等から雇用調整をしていくことはあり得る選択肢です。


    ③解雇者選定の合理性
    やむなく整理解雇を行う場合でも、誰を整理解雇の対象とするかは合理的かつ公平に選定する必要があります。経営者や人事責任者の主観に基づいた恣意的な選定では、有効な整理解雇として認められない可能性が高くなります。
     従業員の年齢、勤続年数、勤怠、成績の優良・不良などの業務上の評価、労働者の生活への影響などの評価等、一定の客観的な基準を設け、人員を選定する必要があります。

    ④解雇手続の相当性

    労働協約がある場合は、整理解雇を行うために労働組合との協議を義務付ける条項を設けている場合も少なくありません。労働協約がない場合であっても、企業には誠意をもって従業員と協議すべき信義則上の義務がありますので、説明会で充実した説明をすることや、整理解雇の対象となる従業員と個別面談を行い、丁寧な説明を心掛ける必要があります。
     なお、整理解雇を行う場合であっても、労働基準法20条1項の適用はありますので、30日前の予告、又は30日分以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を支払うことが必要です。他方で、退職金を支払う必要があるかどうかは各社の退職金規程の内容によります。

  • (3)まとめ
  • 以上のとおり整理解雇の要件は極めて厳格ですので、緊急事態宣言が発出され、ますます経営が厳しくなっているという理由だけで整理解雇を行ってしまうと、後にさらに深刻なトラブルに陥ることになる可能性があります。整理解雇を行う場合には、上述のような手続きを履践しつつ行う必要がありますので、弁護士に相談しつつ進めて行くことを強くお勧めいたします。

(1-6) 内定を取り消す旨を通知をしたところ、内定取消は無効であると主張されています。 就労を認めなくてはいけないのでしょうか?

内定は、内定を取り消す権利が会社側に留保された「解約権留保付き」の労働契約と解されていますから、内定取消しは労働契約の解約に該当します。
 したがって、解雇について定めた労働契約法16条が適用されることになります。同条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定していますので、客観的合理性と社会的相当性の2つの要件を充足しなければ内定を取り消すことはできません。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響により企業業績が著しく悪化したという事情は、内定者側にはまったく帰責性のない事情です。したがって、裁判所は、内定取消を整理解雇(経営不振や事業縮小など、使用者側の事情による人員削減のための解雇)と同様に解し、上述した「整理解雇の4要件」を充足する場合にのみ内定取消が認められるという、極めて厳格な判断をすることになろうと考えられます。
 新型コロナウイルスの影響により企業業績に深刻な影響を与えているとしても、これら4つの要件を満たすことは非常に困難ですから、整理解雇を検討する場合と同様に、内定取消しを回避するためにどのような努力をしたのか、内定取消しの対象とされる学生選定が合理的と言えるか等々を慎重に検討していく必要があります。
 いずれにしましても、一旦、内定取消通知を出してしまって、学生側から内定取消無効を争われると、企業側としては非常に困難な対応を強いられることになりますので、弁護士と十分に協議して慎重に対応するようにして下さい

(1-7) 就業規則に在宅勤務に関する定めがないのですが、現在、定めている余裕がありません。従業員に在宅勤務をしてもらうことは可能でしょうか?

在宅勤務(労働者の自宅で勤務する)やモバイル勤務(ノートPCやタブレット等を利用して様々な場所で勤務する)、サテライトオフィス勤務(自宅近くや通勤途中の場所などメインのオフィス以外の場所で勤務する)など、情報通信技術を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを「テレワーク」と言います。
 このようなテレワークは、原則として就業規則に定めがないと命ずることはできませんが、新型コロナウイルスの感染防止を目的として、一時的措置として実施するのであれば、当該労働者の合意を得て、テレワークを実施することは可能であると考えられます。

(1-8) 従業員に在宅勤務その他のテレワークを行ってもらう場合、会社としてはどのようなことに留意する必要がありますか?

テレワークを行わせる場合、単に自宅待機を命じている訳ではなく、会社の業務に従事させているわけですから、その労務の提供については、出社させた場合と同様に、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることになります。
 通常の勤務と異なる環境で就業することになりますので、労働時間の管理などさまざまな事項についてご留意いただく必要があります。
 テレワークを行う際の留意事項については、平成30年2月22日に、厚生労働省が、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を定めておりますので、ご参考になってください。

厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」

2 不動産賃貸借への影響
(2-1) 緊急事態宣言による自粛要請の結果、売り上げが激減し、店舗の閉鎖も余儀なくされておりますが、オーナーへの賃料減額の要請は可能でしょうか?

自粛要請とはいえ、あくまで、賃貸借の対象となっている物件(借りている部屋)そのものは使用することができますので、当然に賃料が減額されるものでもありません。
 もっとも、国土交通省(土地・建設産業局不動産業課)は、令和2年3月31日に、不動産関連団体を通じて、賃料の支払いが困難な事情がある借主の置かれた状況に配慮し、賃料の支払いの猶予に応じるなどの、柔軟な措置の実施を検討するように要請しています。また、借地借家法32条1項のでは「賃料増減額請求」が可能とされていますから、この条項を根拠にとして交渉を行うことや、賃料の30%を3ヶ月間猶予して欲しいなどの合意を求めて交渉を行うこと、預けている保証金から賃料を減額して欲しいと提案することなど、賃借人として考えられる対応もあります。
 ですから、賃貸人と交渉することなく一方的に賃料を自分の判断で減額させるような分しか払わないなどの強硬な手段は控えるべきです。合意がない状況で賃料を勝手に減額させると、賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除されるリスクがあるからです。
 また、貸主としても、金融機関から借り入れをした上で貸し出しているケースも多く、苦しい立場にあります。その点にも配慮しながら交渉を行うことが重要です。

(2-2) 当社は、大型商業施設のテナントですが、入居している商業施設全体が閉鎖となりました。閉鎖日以降も賃料は支払う義務はありますか?

賃貸借の貸主は、賃貸区画を提供する義務を負っていますから、貸主が商業施設を商業施設側の判断だけで、閉鎖をした場合には、貸主の「貸す義務」が履行されていないことになります状況といえます。
 貸主としても商業施設の閉鎖は苦渋の判断と言えます。このような状況において、施設を借りることができていないにもかかわらず、賃料を支払う必要があるかという点については、民法536条1項が、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と定めています。
 すなわち、賃貸人が「貸す義務」を履行できないことについて、賃貸人にも賃借人にも落ち度がない場合(「責めに帰することができない」場合)、賃借人の反対給付である賃料支払義務も消滅する、もしくは、支払いを拒めるという結論が考えられます。
 事案を異にしますが、震災等が理由となった事案においては、民法536条1項を類推適用して、7割の賃料減額を認めた裁判例や賃料の免除を認めた裁判例もあります。
 もっとも、当事者の合意がないままに支払いを拒否している場合には、賃貸借契約そのものが解除され違約金の支払いを負ってしまうこともありますので、弁護士等の専門家に相談し交渉を依頼して迅速にすすめることが重要です。
 特に、テナントの契約の内容が賃貸借契約とされておらず、業務委託契約とされている場合等、契約に何らかの定めがある場合には、まずはその条項について検討する必要があります。やはり、御自身で判断されるのではなく、何らかの行動を起こす際には専門家に相談することをお勧めします。

(2-3) 入居している商業施設全体が閉鎖されてしまいましたが、当社の業態からすればコロナの感染拡大を防ぎつつ営業することは可能でした。 施設に対して休業補償を請求することは可能でしょうか?

(2-2)で解説した賃料支払義務を負わないことを超えて、損害賠償請求ができるかという点は、別個の検討が必要です。
 確かに、貸主の「貸す義務」が履行できていない以上、借主が休業したことについて発生する損害と、貸主の債務不履行との間に因果関係は認められそうです。
 しかし、この度の社会情勢に鑑みると、貸主が「貸す義務」を履行できなかったことについて、貸主に落ち度があると評価するのは難しいものといえます。
 確かに商業施設の休館は、「自粛」であって「義務」ではないとしても、社会的な生活を営む以上、生命身体への影響を抑えるために施設としてやむにやまれず判断したものといえ、貸主に落ち度があるとの評価は直ちに出来ないと考えます。
 休業補償の請求は難しいものと考えます。

(2-4) 休業要請の先行きが見えないため、賃貸借契約の解除を申し出たところ、期間満了時までの賃料相当額の解約違約金を求められました。支払う必要があるのでしょうか。

この度の新型コロナウイルス蔓延は、賃貸人の責任によるものではありませんから、借主側の一方の判断で、賃貸借契約を解除することは原則としてできません。しかし、長期間にわたって閉鎖するなどして、賃貸物件の効用が失われたといえるような場合には賃貸借契約は終了となるという裁判例(最高裁昭和32年12月3日)がありますので参考にはなります。
 なお、改正民法によって、契約の相手方に契約不履行の帰責性がない場合でも解除が認められることもあります。したがって、原則としては、契約書にしたがった違約金の支払い義務を負う可能性が高いですが、一方で、不当に長期間の違約金支払い義務を負う場合には、暴利行為として無効となる裁判例もありますので、まずは、交渉をしてみることから始めてください。

3 契約の不履行・履行遅滞の責任
(3-1) 新型コロナウィルスの感染拡大により、欠勤者が続出した結果、納期までに製品を納品することができませんでした。 納品遅延により生じた損害について、賠償しなければいけないのでしょうか?

債務不履行に基づく損害賠償責任(民法415条1項)の問題については、まずは当事者間の契約内容に照らして判断することになります。契約内容から明らかでない場合には、民法等の一般法に照らして判断することになります。
民法等の一般法によって判断する場合、納期までに納品できなかったことについて、債務者の責めに帰すべき事由が認められるか、換言すれば、新型コロナウィルスの感染拡大により欠勤者が続出したことによって、納期までの納品ができなかったという事情が、取引上の社会通念等に照らして債務者に帰責できない事情といえるかが問題となります。
債務者に帰責させることができるかどうかについては、人の力による支配・統制を観念することができない事象であり、外部から生じた原因によるものかどうかという点で判断されることが多く、新型コロナウイルスの感染拡大については、まさに人の力による支配を観念できない事象と言えそうです。
よって、本件の場合は、取引上の社会通念等に照らして債務者に帰責できない事情に当たるという余地があります。
問題は納品遅延を防止するために相当の注意をしても防ぐことができない事態といえるかどうかという点です。今回の新型コロナウィルスの感染拡大は、巨大地震が突如発生する場合とは異なります。昨年末に中国武漢において発生してから、相当の時間を経て、徐々に日本でも感染が広がりました。中国武漢における新型コロナウイルスの蔓延については広く報道されていましたから、中国での感染拡大の状況を注視していれば、日本でも感染が拡大する可能性状況についても相当程度予見可能であり、対策をとることができたと評価される可能性があります。 したがって、納品遅延により生じた損害の賠償義務を免れるためには、自社においてこれほどまでに従業員の多数に感染が拡大するような事態までは予見不可能であったことや、納品遅延を未然に防ぐための回避措置を予見可能な範囲で十分に取っており、代替措置も取り得なかったことなど、防止のために相当の注意をしていたとしても、これを防ぐことができなかったことを立証する必要があります。

(3-2) 非常事態宣言を受けて休業することになりました。取引先に対する商品の納付やサービスの提供ができなくなってしまうのですが、損害賠償責任を負うことになるのでしょうか?

本件も、(3-1)と同様、まずは当事者間の契約内容に照らして判断することになります。契約内容から明らかでない場合には、民法等の一般法に照らして判断することになります。民法等の一般法に照らして判断する場合でも、非常事態宣言に基づき都道府県知事から休業要請を受けているかどうか等によって、場合分けして検討するべきでしょう。

  • 1 事業継続を求められている業種の場合
  • 都道府県知事から事業継続が求められている業種の会社の場合には、これに反して会社が自主的に休業しているため、休業が取引の社会通念等からしてやむを得ないとはいえないと考えられます。
    したがって、この場合は会社が取引先に対して損害賠償責任を負う可能性が高いと考えらえられます。

  • 2 休業要請を受けている業種の場合
  • この場合については、現時点では弁護士の間でも現時点で見解が分かれており、統一的な回答をすることができません。
    まず、都道府県知事からの休業要請はあくまで「要請」であり、強制力を伴うものではありませんから、休業するか否かの最終的な判断は会社に委ねられているため、あくまでも会社の休業は自主的なものであるとも考えられます。こう考えると、会社は取引先に対して損害賠償責任を負うことになります。
    他方で、要請に過ぎないとはいえども、新型コロナウイルスの全国的かつ急速なまん延を防止する目的で緊急事態宣言が発せられたことを考慮すれば、事業を継続させることによって感染拡大に寄与することになりかねません。そのため、係る状況下での休業は、取引の社会通念等からしてやむをえないものであると考えることも可能です。
    私達も、接触の8割減が呼びかけられ、可能な限り在宅での勤務を要請されている現在の状況下においては、休業要請を受けた会社には、その社会的責任として休業することが特に求められていると考えますので、休業について当該会社に責任を負わせることは不相当であり、会社は取引先に対して損害賠償責任を負わないと考えています。
    もっとも、冒頭で述べたとおり、この問題については見解が分かれるところであり、個別の事案に応じて結論が異なる可能性があります。

  • 3 上記1または2のいずれにも該当しない業種の場合
  • この場合についても、上記2と同様、見解が分かれます。もっとも、休業を要請されている業種との関係においても、損害賠償責任を負う可能性が否定できない以上、そのような要請を受けていない業種との関係では、上記2で解説させていただいた内容以上に慎重な判断が求められることになるでしょう。


(3-3) 新型コロナウィルスの感染拡大により、イベントを中止せざる得ない状況となりました。イベントのチケット購入者に対して、チケット代金を払い戻す必要はあるでしょうか?

この点については、チケット購入者との契約の中で、イベントが中止となった場合の払い戻しについてどのように規定されていたかによって結論が異なります。

  • (1)中止となった場合の払い戻しに関する合意条項がある場合
  • 基本的には当該合意条項に従った処理がなされることになります。
    なお、契約条項中に、「地震、津波等の天災、火災、洪水、疫病、ストライキ又は戦争、その他これに類する不可抗力に該当する場合にはチケット代金の払い戻しはできない。」というような免責条項が記載されていることがあります。
     このように当該条項の中に「疫病」という文言が規定されていたとしても、直ちに免責されるわけではありません。今般の新型コロナウィルス感染症の流行について、罹患者数、罹患した場合の死亡率、非常事態宣言の状況を踏まえ、社会への影響が多大で極めて危険な状況といえる段階に至っている場合には、「疫病」に該当し、チケット代金の払戻しに応じる義務はありません。

  • (2)中止となった場合の払い戻しに関する合意条項がない場合
  • チケット購入者は、契約に基づいてイベントに参加する権利を有し、イベント開催者はイベントを開催する債務を負っています。そこで、イベント開催者の「責めに帰すべき事由」によらずにイベント開催者の債務が履行不能となったかどうかが問題となります。
    最近の事例としても、多くのイベント主催者が、非常事態宣言発令前の段階で、政府や都道府県からの自粛要請にしたがってイベントを中止していました。一方で、某格闘技団体は県からの自粛要請に従わずにイベントを開催したという事例もあります。自粛要請はあくまで任意のものですから、イベントを開催しなかったことについて、開催者の「責めに帰すべき事由」に該当しないと判断できるかどうか、一概には決められません。
    もっとも、非常事態宣言発令後、都道府県知事からの中止要請(特措法45条2項)に基づきイベントを中止した場合には、強制力はないものの法律に基づく要請であることから、イベント開催者のイベント開催債務は社会通念上履行不能となっており、また履行不能となったことについて開催者の「責めに帰すべき事由」はないと判断される可能性が高いと考えます。
    このように理解できた場合には、危険負担の問題として、イベント開催者はチケット購入者に対して、チケット代金の払い戻しを拒むことができることになります。

(3-4) 都道府県知事からのイベント開催の自粛ないし中止の要請に従い、イベント開催を中止したところ、チケットの購入者から、交通費や宿泊料相当額の損害を賠償すべきだと主張されました。このような要求に応ずる必要があるでしょうか?

この問題は、上述のチケット支払義務の問題とは別の法律問題となり、主催者側の債務不履行責任の問題となります(民法415条)。
都道府県知事からのイベント開催の自粛ないし中止要請によって、事実上イベントの開催が不可能な状況にあるものといえそうです。ですから、イベント中止の判断についてイベント開催者に帰責性はないと判断される場合が多いと考えられ、原則として、交通費や宿泊料相当額の損害賠償義務は認められないことになるものと考えます。
しかし、主催者側が、もっと早くイベント中止を決定・通知していれば、チケット購入者の交通費や宿泊料に関するキャンセル料が発生しなかったと評価できる場合には、決定や通知の遅れが、主催者の故意または過失によるものとして、当該キャンセル料相当額について損害賠償しなければならなくなる可能性がありますから、要注意です。

(3-5) 都道府県知事からのイベント開催の自粛ないし中止の要請に従って、イベント開催を中止しました。イベントの会場となっている施設の利用料金について支払わなくてはいけないのでしょうか? また、施設事業者に対して支払った手付金の返還を求めることは可能なのでしょうか?

まず、施設事業者との契約条項を確認して、中止の場合の支払いの要否等について規定が存在すれば、当該規定に基づいて決することになります。
また、契約内容から明らかとならない場合、施設事業者の施設を利用させる義務が履行不能になっているかどうかを検討することになります。
まず、都道府県知事からイベント開催の自粛ないし中止要請が出ていたとしても、施設事業者の債務の中核は、施設を提供することです。そして、施設を提供すること自体は、新型コロナウイルスが蔓延している状況下においても履行可能です。したがって、施設を利用させる義務は履行不能になっていないと考えられます。
その場合、施設事業者は施設の利用の提供をする(あるいはその履行準備をして通知等をする)ことで、イベント開催者に対して契約で定められた施設利用料金の支払いを請求することができることとなります。この場合、手付金についても、当然返還されることはありません。
 もっとも施設事業者とイベント開催者の契約において、「〇〇のイベントのために施設を提供する」など、特に開催イベントを明示的に特定・限定しているような場合、都道府県知事からの自粛ないし中止要請で当該イベントの開催が(事実上)不可能と評価できるように思います。少なくとも、非常事態宣言下での特措法45条2項に基づく中止要請の場合には、そのように評価できるといえます。そうすると、施設事業者の上記債務も社会通念上履行不能になっていると評価できる余地があることになります。
 その場合には、施設事業者の施設を利用させる義務は、施設事業者の責めに帰すべき事由によらず履行不能になったものとして、イベント開催者は反対債権である施設利用料金義務につき危険負担の原則(民法536条1項)により履行を拒めることとなります。施設利用料金を支払う必要はありませんし、すでに支払われた手付金についても、返還請求をすることができることになります。
なお、都道府県知事からの要請が、イベント開催者に対するイベント開催の中止にとどまらず、施設事業者に対する施設の使用制限・停止(特措法45条2項)に及ぶ状況になっている場合には、施設事業者の施設を利用させる債務が、施設事業者の「責めに帰すべき事由」によらずに履行不能になっていると評価できるかと思います。この場合においても、イベント開催者は反対債権である施設利用料金義務につき、危険負担の原則(民法536条1項)により履行を拒めることとなります。

(3-6) 都道府県知事からのイベント開催の自粛ないし中止要請にしたがって、イベント開催を中止しました。イベント出演者の出演料や会場スタッフに対するアルバイト代金を支払う必要はあるのでしょうか?

イベント出演者や会場スタッフとの契約条項を確認して、中止の場合の支払いの要否等について規定が存在すれば、当該規定に基づいて決することになります。
契約内容から明らかとならない場合には、まず、イベントの中止によりイベント出演者の出演債務や会場スタッフの労務提供債務がは履行不能となっているかどうか、履行不能となったことにつき出演者や会場スタッフという債務者に帰責性がないかどうかなどを検討し、出演料やアルバイト代の支払義務についてイベント主催者が履行を拒めるかを判断することになります。
 イベントを中止したことについてイベント主催者に帰責性がある場合には、危険負担の法理(民法536条2項)により、イベント主催者は出演料やアルバイト代の支払を拒むことはできません。もっとも、都道府県知事からのイベント開催の自粛ないし中止要請によってイベントを中止した場合、イベント開催者に帰責性はないと判断される場合が多いと考えます。この場合には、危険負担の原則(民法536条1項)により、イベント開催者は出演料やアルバイト代の請求に応じる必要はないということになります。

4 下請法との関係
(4-1) 当社は、部品製造会社(資本金額5000万円)で、機械製造会社(資本金額5億円)から部品の製造委託を受けています。機械製造会社から、「従業員から新型コロナウィルスの感染者が発生したことで製造を行えない。製造が再開できるまでは部品の納入を停止したい。」と言われました。どのように対応すれば良いでしょうか?

下請会社である部品製造会社としては、機械製造会社による部品の受領拒否について、下請法違反の主張を検討することになります。
 下請法が適用されるかどうかの適用を受ける否かは、取引内容や取引当事者の資本金額によって決せられることになります。例えば、委託取引の内容が本件のように、な部品の製造を内容とする取引のである場合には、親事業者の資本金が3億円超で、下請け事業者の資本金が3億円以下であれば、下請法が適用されます。
下請代金支払遅延等防止法ガイドブック(pdf)

今回は、発注者が受領拒否を行っている事案ですので、下請法4条1項1号「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと」に該当する違法があるかが問題となります。
 そして、公正取引委員会が公表している下請法に関する運用基準「第4 親事業者の禁止行為 1 受領拒否」は、下請法4条1項1号にいう「下請事業者の責に帰すべき理由」に該当するものについてとして、下請事業者の給付の受領を拒むことが許容されるのは、下請事業者の給付の内容が下請法3条が定める契約書面に明記された委託内容と異なる場合など、極めて限定された場合に限定して解釈しています。
公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」


そのため、全従業員が自宅待機の指示を受けたという事情は、下請事業者側の事情ではありませんし、このような事情のみによってだけでは「下請事業者の責に帰すべき理由」があるものと認められる余地はないように思います。
 そうすると、親事業者である機械製造会社による受領拒否は、下請法に違反するものとして許されないことになります。
 下請法に違反しないようにするために、親事業者である機械製造会社としては、一時的に倉庫を借りて保管するなど、何らかの代替的な方法を用いて部品を受領する必要があるものと言えます。
もっとも、全従業員が自宅待機の指示を受けただけでなく、部品の性質、大きさ、量などの個別具体的な事情に鑑み、代替的な受領手段が存在せず、客観的に受領が不可能であるという事情が存在する場合には、受領の時期を相当程度遅らせることは、相当期間納期を伸ばすことは下請法に違反にしないとも考えられます。実際に、経済産業省が令和2年2月14日に発表した「新型コロナウイルス感染症により影響を受ける下請等中小企業との取引に関する配慮について(要請文書)」の問4は、このような場合において、当事者間で上述した事情を考慮することを求めています。
経済産業省「新型コロナウイルス感染症により影響を受ける下請等中小企業との 取引に関する配慮について」(pdf)

部品製造会社としては、機械製造会社の受領拒否が①下請法に違反することを主張して部品の受領を求めたり、②公正取引委員会に相談して調査や勧告をしてもらえるように促したりすることが考えられます。
 もっとも、親事業者との間で何らの交渉をすることなく、直ちに下請法違反を主張してしまうと、親事業者発注者との継続的取引関係を悪化させることとなります。その結果、契約を打ち切られてしまう危険性もあり得るところです。したがって、下請法違反の主張をしようとする場合には、弁護士とよく相談した上で対応する必要がありますし、このことについては、この後に述べる各下請法違反についても同様です。

(4-2) Q4-1の例で、部品を指定の期日に納品したのに、機械製造会社から、新型コロナウィルスの影響で資金繰りが一気に苦しくなったことを理由として、代金の減額を要求されたため減額に応じざるを得ませんでした。 どのような対応をすれば良いでしょうか?

親事業者である機械製造会社による代金減額の求めに応じて減額していますから、下請法4条1項3号にいう「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」に違反するかが問題となります。この規定は、下請事業者保護の観点から、下請事業者が減額に同意している場合にも適用されると解されています。
そこで、部品製造業者が減額に同意している場合でも、機械製造会社は、公正取引委員会による勧告や指導を受けることがあり得ますし、減額の合意が公序良俗に違反して無効となることもあり得ます(東京地裁平成22年5月12日判決)。
下請事業者である部品製造会社としては、下請代金の減額に同意してしまったとしても、①下請法4条1項3号の趣旨に照らして不当性が強く公序良俗に違反して無効であると主張して、全額の支払いを要求する、②公正取引委員会に相談して勧告や指導を要請するという手段を検討することになります。

5 罹患の情報と個人情報保護法
(5-1) 長時間にわたって商談をした取引先の従業員の中から、新型コロナウィルスの感染者が出たとの噂を聞きました。当該取引先の従業員と面談した当社従業員の処遇を検討するために、取引先の従業員が新型コロナウィルスに感染したことについての情報を取得したいと考えておりますが、許されますか?

新型コロナウィルスに感染しているという情報や、PCR検査で陽性反応が出たという情報は、要配慮個人情報(個人情報保護法2条3項)に該当します。
したがって、これらの情報を取得する場合には、原則として、本人である取引先の従業員の同意を得ることを要することになります(個人情報保護法17条2項)。
この場合、原則として、これらの情報の取得の経緯などを確認し、その記録を作成・保存しなければなりません(個人情報保護法26条1項、3項、4項)。
但し、本人の同意を得ることが困難であり、かつ、①人の生命・身体の保護のために必要がある場合、または②公衆衛生の向上のために特に必要がある場合には、例外として、本人の同意なくして、要配慮個人情報を取得することができます(個人情報保護法17条2項2号・3号)。この場合、例外として、これらの情報の取得の経緯などを確認・記録義務については適用されません(個人情報保護法26条1項但書)。
したがって、本件においても、取引先の従業員が重症化し、本人の同意を得ることが困難である場合には、②に該当するものとして、当該従業員の同意を得ることなくして、当該従業員が新型コロナウィルスに感染しているという情報を取得することができます。

(5-2) 5-1の例で、当社の従業員は健康なようなのですが、当社の従業員の家族が新型コロナウィルスに感染したという噂を耳にしました。当該従業員の処遇を決めるために事実を確認したいのですが、どのような手続きを経れば良いでしょうか?

まず、従業員の家族が新型コロナウィルスに感染したという情報を取得するに際し、家族の内の誰が感染したかがわからない形で取得する場合であれば、要配慮個人情報に該当しないので、感染した家族本人の同意を得ることなく、情報を取得することは可能です。
これに対し、家族の内の誰が感染したかが特定できる形で情報を取得する場合には、当該感染した家族の要配慮個人情報に該当するので、原則として、感染した家族本人の同意を得ることが必要です。この場合、原則として、これらの情報の取得の経緯などを確認し、その記録を作成・保存しなければなりません。
但し、当該感染した家族が重症化し、本人から同意を得ることが困難であり、かつ、①人の生命、身体の保護のため必要がある場合、または、②公衆衛生の向上のために特に必要がある場合には、本人の同意なく、要配慮個人情報を取得することができます(個人情報保護法17条2項2号・3号)。この場合、例外として、これらの情報の取得の経緯などを確認・記録義務については適用されません。
したがって、本件においても、当該感染した家族が重症化し、本人の同意を得ることが困難である場合には、②に該当するものとして、感染した家族本人の同意を得ることなく情報を取得できると考えられます。

(5-3) 当社従業員が新型コロナウィルスに感染していることが判明しました。当該従業員は入院しており、直ちに同意を得られないのですが、取引先や顧客、出入りしていたビルの管理者等に情報提供するにあたって、どのように対応すれば良いでしょうか?

本件も、取引先や顧客、出入りしていたビルの管理者や、近隣のテナントの立場で考えると、Q1、Q2と同様に、新型コロナウィルスに感染しているという要配慮情報を取得するに際しては、原則として、本人である従業員の同意を得ることを要し、例外として、本人の同意を得ることが困難であり、かつ、①人の生命・身体の保護のために必要がある場合、または②公衆衛生の向上のために特に必要がある場合には、本人の同意なくして、要配慮個人情報を取得することができます。
また、当該従業員が新型コロナウィルスに感染したという情報を個人データベースに入力して管理する場合には、個人データの第三者提供に関する規制を受けることになりますので、原則として本人の同意が必要ということになります。この場合、原則として、その記録を作成・保存しなければなりません(個人情報保護法25条1項、2項)。
但し、本人の同意を得ることが困難であり、かつ、①人の生命・身体の保護のために必要がある場合、または②公衆衛生の向上のために特に必要がある場合には、本人の同意なくして第三者に個人データを提供することができます。この場合、例外として、第三者提供に係る記録義務については適用されません(個人情報保護法25条1項但書)。
したがって、本件においても、当該従業員が重症化し、本人の同意を得ることが困難である場合には、②に該当するものとして、当該従業員の同意を得ることなくして当該情報を第三者に提供することができるものと考えられます。